多重債務の無料配信
新宿店では20代をターゲットにした。
彼らにアピールするためにも斬新なデザインが必要であった。
T広報部によれば、「カードを新宿店開店の半年も前に発行したのも経験の乏しい若者市場なので早く動いてファンを増やしたかったから」であるという。
百貨店業界初のポイント制といっても、仕組みはTカードやS]カードと同じFUPカードだ。
しかし、こちらはキャッシュバックではなくお買い物券での還元であった。
Tで使うと100円につき7ポイント(カードによる1回払い)がたまり、ポイントごとにお買い物券と交換できる。
セールスポイントは最大7%という大きな割引率だが、バーゲンセール、ボーナス払い、リボ払いでも100円につき3ポイントが加算される。
しかも、提携するJCB、Sクレジットのカード加盟店で買い物をしても200円につき1ポイントが付く。
さらに、年会費は一切かからない無料カードのために発行直後から人気になっていた。
従来のタカシマヤカードの会員が200万人あったが、このカードは新規に100万人を獲得することを目標としていた。
既存店を巻き込んだ新宿百貨店戦争の勃発新宿地区は1R、小田急、京王帝都、営団地下鉄、都営地下鉄、西武の各線が乗り入れ、新宿駅のl日の乗降客は約300万人にのぼる大ターミナルだ。
百貨店も東口にI、M、丸井、西口にはターミナル型の小田急百貨店、京王百貨店が並び、周辺の昼間人口は約80万人、商圏人口NOOO万人ともいわれる日本最大の消費地である。
その新宿地区の繁華街の年間売上高は。
「タカシマヤ・タイムズスクエア」が殴り込みをかけるわけだから、商店街はもちろん、I、Mなどの既存百貨店が大きな脅威と感じるのは当然だろう。
パイが広がればよいが、パイの食い合いになっては共倒れしかねない。
各百貨店はl割の減収は必至とみて防戦体制に入った。
ブランド品の見直しから、売場の改装、クレジットカードのリニューアルなど次々と手を打った。
特にカードのリニューアルには各社とも力を入れた。
バーゲン商品は除外するなど規制が多かった。
これは長引く消費不況にたまりかねた百貨店側が、利益吐き出しにつながるカード特典を絞った結果であった。
利用者からすると、割引率が小さいためにせっかくカードを使っても利益実感が得られないと不満の声が高かった。
しかし、Tが進出するとわかってからは、その制限を見直すところが出てきた。
魅力的なカードをつくつてT進出の前に顧客を囲い込んでおこうというねらいである。
特典の見直しに、最初に手をつけたのはMであった。
Mカードは96年3月に大幅なリニューアルを実施、それまでのCBと日本信販という提携先を母体行のさくら銀行系のUCに一本化してサービス特典の強化を行った。
さくら銀行は同じMグループに属するので、ツーカーの仲である。
言ってみれば、存分にわがままの言える相手と組み直したということだ。
リニューアルの内容は、まず、割引特典を3%から5%に引き上げ、割引を適用していた単価制限を撤廃した。
それだけでなく現金でもクレジットでもその場で5%を引くというシステムにした。
「当社はポイント制といった難しい方法は考えませんでした。
お客さまにわかりやすいサービスが第1と考えていますから、こうした形での提供になりました。
何事も単純に運ぼうというのがモットーですから」と独自性を強調。
年間目標100万枚でスタートしたが、発行直後の96年4月末には早くも20万人の会員を獲得してダッシュをかけた。
Mでの現金払い割引サービスの開始、南口のT開店を間近に控え、顧客を奪われてはならじAJ、月から現金での割引サービスを開始したのが京王百貨店と小田急百貨店であった.節宿西口に店舗を構える京王百貨店、小田急百貨店は、ともに京王帝都、小田急電鉄の始発新宿駅に隣接するターミナル店。
もともと沿線に住む固定客の利用が多いが、M、Tの動きを座視するわけにはいかなかった。
京王百貨店の京王パスポートカードは、割引率を3%から5%に引き上げ、現金払いにも対応するようになった。
さらにこれまで除外されていたバーゲン商品も割引対象に含め、中元・歳暮に.「京王ご推奨ギフト」を10%割引(酒類は5%)で提供、年4回の会員向け特別優待も10%割引とするといった特典を付けた。
小田急百貨店でも自社発行の小田急フリーカードで、クレジット払いに加え現金払いでも5%割引とした。
さらに中元・歳暮期に開催される「百花選ギフト優待セール」で約500点の商品が10%割引、年2回の特別優待セールでは会員限定の「百花選ギフト特別ご招待」はなんと3割引の超優待が受けられる特典を付け加えた迎撃態勢を取り、新宿での顧客獲得競争はいよいよ職烈になってきた。
新タカシマヤカードが打ち出したメリット″しかし、他のデパートカードと比べると、特典では新タカシマヤカードの7%割引は群を抜いていた。
5%と7%では大きな違いがある。
開発にあたって、T百貨店のM課長は大いに頭を悩ませた。
何といっても百貨店業界では初めてのポイント制度である。
ポイント制が顧客に受け入れられるかどうかもわからない。
実は、割引で還元するか、ポイントで還元するかはそれまで社内で議論が繰り返されていた。
社内では、「スタンダードな割引がいいのではないか、ポイントになるとわかりにくい」という意見が強かったが、そこをM課長は押し切った。
「ポイント制の利点はいろいろあるが、一度システムをつくっておけば、ポイント率や換金率の上下、買い物券を割引に変えたりと、自在に変更できる。
割引の場合にはそうはいかない」と考えたからだ。
次に利益還元の方法が問題になった。
キャッシュバックでいくのか、買い物券でいくのかといぅことだった。
プロジェクトチームのスタッフには売り場の女性店員が参加していたが、「主婦の立場からすると、現金バックより買い物券のほうがうれしい」という意見が多かった。
まず、買い物をすると7%のポイントが付くそのポイントがたまると買い物券がもらえる、その買い物券でTの商品が買える。
Tで買い物をすることで客は3回も″お得感≠味わうことができるというのだが、いかにも主婦らしい発想である。
また、商品券でなくTでしか使えない買い物券との交換にしたのはうT、のリピート客が見込めると考えたからだ.1度Tを利用するとその人は何度も繰り返し足を運び、得意客に育っていく。
買い物券ならいくらたくさん発行してもまたTで利用されるわけだから、販売促進にもつながる。
還元率を思い切って高めに設定することもできた。
「問題は、その率をどう決めるかでした。
6%か、7%か、それとも8%でいくかを考え、コンピュータでシミュレーションして経営的に判断しています。
それと、いくらの『お買い物券』七交換するかでも悩みました。
Tはその特典を前面に打ち出そうとした。
だが、これには提携するカード会社のほうから抵抗があった。
カードの多くは年会費無料としているが、そのほとんどは初年度無料という内容である。
2年目からはきちんと年会費を徴収する。
Tからこの提案があった時にカード会社の担当者は最初、初年度無料のプログラムと考えた。
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